ナイアシンアミドとは?化粧品に広く使われているナイアシンアミドの成分や効能について徹底解説

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

「ナイアシンアミド」は様々な化粧品に使われていることから、気になっている人も多いのではないでしょうか。そこで今回はナイアシンアミドとはどんな成分なのか、効能などを含め徹底的に解説します。

ナイアシンアミドはナイアシンの仲間

ナイアシンアミド(別名:ニコチン酸アミド)は、化粧品成分としてのイメージが強いですが、食品から摂取できる水溶性ビタミン「ナイアシン(ビタミンB3)」の仲間です。ナイアシンは「ナイアシンアミド」と「ニコチン酸」の総称です。含まれる食品によって形を変えていて、動物性食品には「ナイアシンアミド」として存在しています。またナイアシンアミドは食事からだけでなく、必須アミノ酸のトリプトファンをもとに体内で作られることもあります。
体内のナイアシンアミドは、糖質や脂質、タンパク質の代謝など、様々な働きに関わっています。また皮膚の炎症を抑えるなど、皮膚や粘膜を健康に保つ上でも重要な働きがあります。

化粧品などに含まれるナイアシンアミドの働き

ナイアシンアミドは体内で皮膚の健康維持などに関わっていますが、化粧品などの成分として肌に直接吸収されることでも、様々な作用を発揮することがわかっています。ナイアシンアミドの肌に対する代表的な働きとして、肌荒れ予防、美白作用、しわ予防の3つが挙げられます。それぞれについて説明します。

(1)バリア機能の修復や肌荒れ予防
外部の刺激から保護したり、体内の水分を外に逃げないようにしたりするために、ヒトの皮膚には「バリア機能」が備わっています。バリア機能は皮膚表面を覆う皮脂膜によるものと、角質層の水分保持機能によるものの大きく2つがあります。そのうち角質層の水分保持機能を担っているのは、セラミドなどの細胞間脂質や、天然保湿因子です。たとえばセラミドには、細胞間の水分を抱え込んで外へ逃がさないようにする働きがあります。水分が豊富な肌は外部からの刺激にも強く、肌荒れなどが起きにくくなります。
ナイアシンアミドにはセラミドなどの細胞間脂質を作り出す働きがあるため、バリア機能を修復したり強化したりしたい時にはおすすめの成分です。またバリア機能の低下による肌荒れ予防だけでなく、炎症そのものを抑える作用もあります。

(2)美白作用
皮膚に紫外線が当たるとシミのもとになるメラニンが作られます。メラニンが溜まり、それが周辺のケラチノサイトに移送されると、色素沈着を起こしてシミが作られやすくなります。
ナイアシンアミドには、合成されたメラニンの移送を阻害する働きがあり、色素沈着やシミを防ぐ効果が期待できます。また紫外線防御成分と併用することで、皮膚への色素沈着を抑制する効果がアップします。

(3)しわ予防
しわの原因の一つに、加齢や紫外線によるダメージの蓄積で、コラーゲンやエラスチンなどが減少することがあります。ナイアシンアミドには、コラーゲンやエラスチンのもとになる線維芽細胞の合成を促す作用があり、しわやハリの低下などを防ぐ効果が期待できます。
最近、ナイアシンアミドが注目されていますが、その背景には2017年頃にナイアシンアミドがしわ改善の有効成分として厚生労働省から医薬部外品として承認を受けたことが関係しています。これがきっかけとなり、しわに効く成分としてナイアシンアミドが広く認知されることになりました。

このように、ナイアシンアミドは様々な効果が期待できますが、即効性があるわけではありません。すぐには効果を実感できないかもしれませんが、継続的に使ってみるとよいでしょう。

ナイアシンアミドの安全性や他の成分との併用について

「ナイアシンアミドを使いたいけれど誰でも使えるの?」「副作用のリスクはある?」など、気になることがある人もいるかもしれません。結論から言うと、ナイアシンアミドは安全性がとても高い成分です。美容成分としては20年以上使われていて、シワ改善有効成分として厚労省に承認される前から、様々な効果を期待して化粧品に配合されてきました。また、長期使用をしている場合の重篤な副作用の報告も少ないことがわかっています。そのため肌タイプを問わず、敏感肌の人でも使いやすい成分です。
また、ナイアシンアミドは基本的に他成分との併用も問題ありません。それだけでなく併用する成分の刺激性を緩和する効果も期待できます。たとえばビタミンCは、濃度が高くなると刺激が出やすくなりますが、ナイアシンアミドと併用することで刺激を感じにくくなり使いやすくなる人がいます。
またレチノールも同じように刺激性が軽減されることがあります。レチノールは、しわの改善などが期待できますが、使用開始後に赤みや皮むけなどが出やすい成分です。そこでナイアシンアミドと併用することで、刺激が和らぎ、肌が敏感な人でも使える場合があります。
このようにナイアシンアミドは様々な成分と相性が良いため、苦手な化粧品がある人でも比較的使いやすいでしょう。ただし「ナイアシンアミドとの併用は控えること」という注意書きがあった場合には、その指示に従うほうが安心です。

ナイアシンアミドを含む製品の選び方

ナイアシンアミドを含む製品は主に医薬部外品と化粧品の2つに分けられます。医薬部外品とは医薬品に準ずるもので、特定の効果・効能が認められた成分を一定量配合しているものを指します。一方で、化粧品は皮膚や髪、爪などを清潔に、美しく保つことを目的としたものです。効果・効能を謳うことはできず、配合が禁止されている成分はありますが、有効成分の規定量などについては基準が設けられていません。
このように医薬部外品と化粧品には明確な違いがあります。ナイアシンアミドを配合する製品を使う場合には、どちらに該当するものなのか、よく確認しましょう。ナイアシンアミドを一定量配合した製品を使いたい場合は「医薬部外品」の記載のあるものを選んでください。また、化粧品でも「高濃度」などと記載されているものがありますが、初めてで肌に合うか不安な人は慣れるまでは濃度がそれほど高くないものを選ぶほうが安心でしょう。また副作用が少ないとはいえ、ナイアシンアミドが肌に合わない人もいます。使用後に違和感や気になる症状があれば使うのをやめて、皮膚科医に相談しましょう。

今回はナイアシンアミドについて解説しました。刺激の少ないナイアシンアミドは普段のお手入れに取り入れやすい成分です。お伝えした効果に興味のある人は、まずはどんな製品があるのか、調べてみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • ナイアシンアミドはビタミンB3(ナイアシン)の一種で、水溶性ビタミンとして食品に含まれ、動物性食品では「ナイアシンアミド」として存在している
  • 美容成分としてのナイアシンアミドは、バリア機能の修復と肌荒れ予防作用、美白作用、しわ予防作用がある
  • ナイアシンアミドは安全性が高く、敏感肌の人も使いやすい
  • ビタミンCやレチノールと併用することでそれらの刺激が緩和されて使いやすくなることがある
  • ナイアシンアミドを含む製品には医薬部外品と化粧品とがあるため自分の希望に合わせて使い分けると良い
  • 刺激が少ないとはいえ肌に合わない可能性がゼロではないため、使用後に違和感がある時は使うのをやめて専門医に相談するほうが良い