これはニキビ?いぼ?「赤いほくろ」と呼ばれる老人性血管腫(チェリースポット)を見分ける方法や治療法を解説。

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

皮膚にできた赤いほくろのようなもの。どうすればよいか対処に困ったことはありませんか。ニキビやいぼの可能性もありますが、長年消えないものは「老人性血管腫」かもしれません。それぞれの違いや原因、老人性血管腫の治療法について解説します。

老人性血管腫(チェリースポット)とは

「ニキビ」や「いぼ」に比べると、やや聞き慣れない老人性血管腫。別名「赤ほくろ」や「チェリースポット」などと呼ばれる皮膚の病気で、1〜4mmほどの平坦かやや盛り上がった赤い点ができます。はっきりとした原因は明らかになっていませんが、何らかの理由によって毛細血管が増殖することにより生じる良性の皮膚腫瘍です。「老人性」という名前はついていますが、30代頃から出現することがあります。
老人性血管腫ができやすいのは、主に顔や胸元、背中、腕などですが、身体のどこにでも生じる可能性があります。基本的に無症状で、かゆみや痛みを伴うことがないため、日常生活への大きな支障はないでしょう。
ただし、顔など目立つところにできてしまうと気になりやすく、年齢と共に増える可能性もあります。一見、ニキビや虫刺されのようにも見えますが、自然に治ることは少ないため、長年消えない赤い点がある場合は、老人性血管腫の可能性が考えられるでしょう。

老人性血管腫はニキビやいぼと見分けることはできる?

老人性血管腫と見分けにくい皮膚疾患には「ニキビ」や「いぼ」がありますが、全く異なるものです。それぞれの特徴を見ていきましょう。

ニキビ

医学的には「ざ瘡(ざそう)」と呼ばれる病気で、額や頬、口の周り、下顎などにできる発疹を指します。思春期から青年期にかけてよくみられますが、大人になってからニキビに悩まされる人も増えており「吹き出物」と言われることもあります。ニキビができる原因には毛穴の閉塞や皮脂の過剰分泌、ニキビの元になるアクネ菌の増殖などが関わっており、はじめは毛穴に皮脂が詰まった状態になります(白ニキビ)。自然に治ることもありますが、悪化するとニキビ患部の毛穴が開いて皮脂が酸化し黒っぽくなったり(黒ニキビ)、炎症を起こして赤く腫れ上がることもあります(赤ニキビ)。ニキビは、毎日のスキンケアや生活習慣の見直しなどによってある程度は予防したり、セルフケアをすることはできますが、炎症がひどい場合やかゆみや痛みを伴う場合は、医療機関を受診しましょう。

いぼ

いぼは皮膚から盛り上がっているできものの総称で、医学的には「疣贅(ゆうぜい)」といいます。いぼができる原因はウイルス感染が原因のものと、体質でできるものに大別されます。皮膚科で一般的に「いぼ」として診察されるものはウイルス性のいぼであることがほとんどです。これは主に「ヒト乳頭腫ウイルス」と呼ばれるウイルスが手や指、足の裏などにできた小さな傷から皮膚に入り込んで発生するもので、むやみに触ると大きくなったり、数が増えることもあります。その他、加齢や紫外線の影響によってできる「老人性いぼ」や小さい子どもによく見られる「水いぼ」などもあります。

このように老人血管腫とニキビやいぼなどは原因が大きく異なりますが、素人が正確に見分けることは難しいため、皮膚科で診てもらいましょう。長年消えない赤い点があり、その他の症状がない場合は、老人性血管腫の可能性が高いものの、他の病気が隠れていることも考えられます。また、仮にニキビやいぼだった場合、誤って対処することで悪化したり痕が残ったりする可能性があります。そのため、皮膚のできものを見つけた時は、病院を受診して正しい診断と適切な治療を受けることが必要です。

老人性血管腫の治療法

老人性血管腫は必ずしも治療が必要な疾患ではありません。けれども、見た目が気になる場合は次のような治療法によって目立ちにくくすることができます。

炭酸ガスレーザー

保険適用の一般的な治療法です。2mm以上の老人性血管腫であれば、炭酸ガスレーザーを用い病変を焼く、という方法が選択肢になります。局所麻酔を用いるため、注射の痛みは多少ありますが、施術中の痛みは基本的にありません。治療後は傷になり、徐々にかさぶたが形成されて1〜2週間で自然に剥がれ、1〜3ヶ月経てば赤みもひいて目立ちにくくなるでしょう。

Vビームレーザー

保険適用外にはなりますが、光治療機を用いたVビームレーザーの治療もよく行われています。必要に応じて麻酔クリームなどを使用しますが、照射時、輪ゴムではじかれるような痛みがあります。治療後は少し赤みやヒリヒリ感が出ることはありますが、翌日からは入浴が可能です。色素沈着を予防するため、治療後は照射部位を擦らないよう気をつけ、遮光することが重要です。

これらの治療法は見た目が気になってコンプレックスになっているようなケースでは、有効な治療法と言えるでしょう。

他の皮膚疾患と間違われることがある老人性血管腫。誤った対処法によって症状が悪化したり、痕が残ったりしないように、気になるできものがある時は、早めに皮膚科を受診しましょう。

まとめ

  • 皮膚に赤い点ができる「老人性血管腫」は「赤ほくろ」や「チェリースポット」とも呼ばれる
  • 老人性血管腫は毛細血管が増殖することにより生じる良性の皮膚腫瘍で、30代頃から出現することがある
  • 老人性血管腫と見分けにくい皮膚の症状には「ニキビ」や「いぼ」があるが、全く異なる
  • 長年消えない赤い点があり、痛みやかゆみなどの症状を伴わない場合は老人性血管腫の可能性が高いが、正確に見分けるには皮膚科での診断が必要
  • 老人性血管腫の治療法には、炭酸ガスレーザーやVビームレーザーなどがある
  • セルフケアでは症状が悪化したり、痕が残りやすくなることもあるため、気になるできものがある場合は、早めの皮膚科受診がおすすめ