大人も発症するあせも。自分でできる予防法も解説

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

あせもは小さな子どもがなるもの、と思っている人がいるかもしれません。けれども、大人でもあせもを発症することがあり、日頃から汗対策をしっかり行っていないと、知らぬ間にかゆみなどに悩まされることがあります。あせもができる理由や予防法、受診の目安などについて解説します。

「あせも」の原因

あせもは、「汗疹(かんしん)」と呼ばれる皮膚疾患で、かゆみや赤み、丘疹(ブツブツ)などの症状を伴います。原因は、大量の汗をかくことによって汗腺(エクリン腺)の出口(汗孔)がふさがれてしまうことにあります。身体の外に出られなくなった汗は、「導管(汗の通り道)」をつまらせ、周辺に漏れ出していきます。その結果、かゆみや赤みなどの症状を引きおこしてしまうのです。とくに汚れや垢がたまっていると、汗の出口がふさがりやすくなり、あせもを発症しやすくなります。

あせもの種類

あせもは、皮膚の導管がつまる位置によって、大きく3つの種類に分けられています。次のように、それぞれ現れる症状も異なります。

○水晶様汗疹(すいしょうようかんしん)

角層(皮膚の表面)の内部や、そのすぐ下にある導管がつまることで発生します。おもな症状は、直径数mmほどの小さな水ぶくれ(水泡)で、赤みやかゆみなどは伴いません。治療をしなくても1日~数日ほどで治るため、気づかない人も多いといわれています。

○紅色汗疹(こうしょくかんしん)

角層よりもやや深い部分にある「顆粒層(かりゅうそう)」付近の導管がつまることで発生するあせもです。1~2mmほどの丘疹ができ、赤みや強いかゆみを伴います。悪化して細菌感染などを起こすと、「とびひ」の原因になったり、膿が出ることがあります。高温多湿の環境下にいる人や、汗をかきやすい乳幼児、肥満の人、多汗症の人などに多く見られます。

○深在性汗疹(しんざいせいかんしん)

紅色汗疹を繰り返していると、皮膚のさらに奥(表皮と真皮の接合部)にある導管が壊れてしまうことがあります。すると、発汗時に皮膚が白っぽく盛り上がるようになります。これが深在性汗疹です。かゆみなどは伴わないものの、導管が壊れて汗をうまく排出することができなくなるので、熱中症のリスクが高まります。熱帯地方など暑い地域に住む人に多いあせもで、日本ではあまり見られません。

あせものできやすい部位

お伝えしたように、あせもは汗を大量にかくことが原因ですから、身体の中でも汗をかきやすかったり、通気性の悪い部位には症状が出やすくなります。たとえば、頭や額、首周りや膝の裏、肘の内側、お尻などは、あせものできやすい部位です。また、下着やアクセサリーなどを身につけている人は胸元などにあせもができやすくなりますし、リュックサックを使っている人は、背中やベルトが密着する肩周りなどにも注意が必要です。

大人も注意したいあせも

冒頭でお伝えしたように、あせもは小さな子どもがなるもの、と思っている人は多いでしょう。たしかに、小さな子どもはあせもができやすい傾向があります。というのも、乳幼児は身体の表面積が小さいのに、汗腺は大人と同じくらいあるからです。小さな身体で汗をたくさんかくので、あせもができやすくなります。
でも、大人も油断はできません。お伝えしたように、肥満や多汗症など、いわゆる汗っかきの人はとくにそのリスクは高いのですが、近年は、夏場を中心に暑い日が増えていることから、これまであせもができなかった、という人も要注意です。思わぬ症状に悩まされないようにするために、予防やケアをしっかり行っておくようにしましょう。

あせもの予防法

あせもを予防する上でまず大事なのは、大量に汗をかかないようにすることです。たとえば、暑い日にはエアコンや除湿器などを使って、温度や湿度を調節するようにしましょう。また、通気性のよい服装を心がけることも大事。締め付けの強い服装はあせもの原因になるので、暑い日などは避けたほうがよいでしょう。さらに、素材選びを見直すことも重要なポイントの一つ。たとえば、ポリエステルなどの化学繊維よりも、綿や絹、麻素材の衣類のほうが、通気性や吸水性に優れています。
あわせて、汗をかいた後のケアも忘れないようにしましょう。汗をかいたら、清潔なハンカチやタオルでこまめに拭くようにします。その際、ゴシゴシ拭いてしまうと、皮膚に余計な刺激を与えてしまうので、優しく抑え拭きをします。また、可能な場合は着替えたり、シャワーを浴びて汗を流すほうがよいでしょう。身体を清潔に保って、あせもを予防しましょう。

あせもの対処法と受診の目安

あせもができてしまった場合は、まずは清潔に保つことを心がけ、掻きむしったり、触ったりしないようにしましょう。お伝えしたように、細菌感染を起こすと、とびひや膿がたまる原因になります。かゆみが強く、我慢できないようなときには、皮膚科を受診するようにしましょう。皮膚科では、ステロイドなどの外用薬を処方してもらえますが、悪化すると治療が長引いてしまいますから、ひどくなる前に相談しましょう。
また、セルフケアで対処しているのに改善しない、という場合も病院に相談したほうがよいでしょう。あせもと思っていたのに違う病気だった、という可能性もゼロではないからです。たとえば、アトピー性皮膚炎やニキビ、汗かぶれ(汗が刺激となって炎症が起きるもの)などは、あせもと間違われやすい皮膚疾患です。それぞれの病気に合わせた治療が必要になるので、皮膚科で相談しましょう。

まとめ

  • あせもは「汗疹(かんしん)」と呼ばれる皮膚疾患で、かゆみや赤み、ブツブツ(丘疹)などの症状を伴う
  • 汗で汗腺の出口がふさがれて、導管がつまることが原因
  • 汚れや垢が溜まっているとあせもができやすくなる
  • あせもには、水晶様汗疹、紅色汗疹、深在性汗疹の3つがあるが、深在性汗疹は日本ではあまり見られない
  • 水晶様汗腺は小さな水ぶくれができるが、かゆみなどの症状がないので、気づかれないことも多い
  • 紅色汗疹は赤みやかゆみ、兵疹などの症状を伴い、悪化すると細菌感染を起こすこともある
  • 頭や額、首周り、ひじの内側、ひざの裏、おしりなどは、あせもができやすい部位
  • 下着やアクセサリー、リュックなどと接する部位にもあせもができることがある
  • 小さな子どもはあせもができやすいが、近年は夏場の暑さが増しているので、大人も注意が必要
  • あせもの予防でまず大事なことは、大量の汗をかかないようにすること
  • 室内の温度・湿度調節をしたり、服装を見直すことがポイント
  • 汗をかいた後はこまめに拭いたり、着替えること、シャワーを浴びることなども重要で、清潔に保つことがあせも予防につながる
  • かゆみが強い時は、皮膚科に相談すること
  • セルフケアで改善しない場合は、ほかの皮膚疾患の可能性も考えられるので、病院で相談したほうがよい