顔にできやすい青年性扁平疣贅。市販薬での治療や自然治癒は可能?

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

「青年性扁平疣贅(せいねんせいへんぺいゆうぜい)」とは、若い女性に多く見られる「いぼ」のことで、とくに顔や腕などにできやすいという特徴があります。その見た目からシミなどと間違われることも多いのですが、放っておいて治ることはあるのでしょうか。青年性扁平疣贅の原因や治療法について、解説しましょう。

青年性扁平疣贅の原因

そもそも「疣贅(ゆうぜい)」とはいぼのことを指します。いぼにはたくさんの種類がありますが、良性なので、重い症状に至ることはありません。ただし、中にはウィルス感染が原因のものがあって、知らずにいじってしまうと、悪化したり、他の部位に拡がってしまうことがあります。ウィルス感染で起こるいぼには、たとえば、青年性扁平疣贅や子どもに多く見られる「尋常性疣贅」などがあり、どちらも「ヒトパピローマウイルス(HPV)」が原因となります。
ヒトパピローマウイルスには実に多くの種類があり、すでに150種類以上の型が確認されています。日常的にありふれたウィルスで、ほとんどの場合、感染しても自然に排除されますが、免疫力が低下しているときに感染すると、さまざまな病気の発症につながる恐れがあります。ウィルスの型や感染場所によって発症する病気は異なりますが、たとえば青年性扁平疣贅の場合、ヒトパピローマウイルスの3型、10型、28型、29型が、傷口などから皮膚に侵入することで発症することがわかっています。

青年性疣贅の特徴

青年性扁平疣贅には、尋常性疣贅をはじめとする典型的ないぼとは異なる特徴がいくつかあります。たとえば、形。一般的にいぼというと、ボコッと盛り上がったものをイメージする人が多いでしょうが、青年性扁平疣贅の場合は、表面が平べったく、小さな突起がたくさんできることが特徴です。複数できることも珍しくなく、線状に発生することもあります。また、顔や腕に発生しやすく、顔の中でもとくにおでこはできやすい部位の一つです。さらに、小さく、茶色っぽいものが顔に拡がることから、シミと勘違いされることも多く、本人がいぼだと気づいていないことも珍しくありません。

青年性扁平疣贅の治療法とは?

いぼの治療法は、一つではありません。とくにウィルス感染によるいぼの中には、治るまでに時間を要するものや、再発を繰り返すものがあるので、状態に合わせて、複数の治療法を組み合わせて行うことがあります。代表的な治療法をみていきましょう。

〇冷凍凝固療法

マイナス200℃前後の液体窒素を用いて、皮膚の表面を凍結させ、ウィルスに感染した細胞を壊死させる方法です。「尋常性疣贅」や「尖圭コンジローマ(性器や肛門にできるいぼ)」などの治療でよく行われていますが、治療中や治療後に腫れや痛みを伴います。また、治療後に水ぶくれができたり、色素沈着が起こることもあります。さらに、一度だけの治療で治ることは珍しく、多くの場合、数回の通院が必要になります。
青年性扁平疣贅の治療でも、冷凍凝固療法が用いられることがありますが、とくに顔の場合は色素沈着を起こす可能性があることから、ほかの治療法がすすめられることがあります。

〇薬物療法

いぼ治療によく用いられるのが、ハトムギを成分とする「ヨクイニン」という漢方薬です。皮膚の免疫力を高めたり、ターンオーバー(皮膚の新陳代謝)を正常化する働きがあります。青年性扁平疣贅の場合は、保険が適用されます。

〇炭酸ガスレーザー

炭酸ガスレーザーとは文字通り、炭酸ガスを用いたレーザー治療です。いぼのほかにも、ほくろや血管腫などの治療にも取り入れられています。
炭酸ガスレーザーは、皮膚の水分に反応して熱エネルギーに変わるという特徴があります。この熱エネルギーが蒸散する際に、ウィルスに感染した組織を損傷させます。多少の痛みが伴うことから、いぼの数や大きさによって、麻酔が行われることもあります。
炭酸ガスレーザーのメリットとして、レーザーがピンポイントで患部に照射されることから、周りの健康な皮膚組織や血管に対するダメージを最小限に抑えることがあげられます。また青年性扁平疣贅の場合、保険適用内で治療を受けることができます。

青年性扁平疣贅:市販薬で治ることは?自然に治ることはある?

このように、皮膚科にはさまざまな治療法がありますが、中には「できれば受診せずに治したい」という人がいるかもしれません。また、自然に良くなるのを待つ、という人もいるでしょう。お伝えしたように、青年性扁平疣贅は青年期の女性にできやすい、という特徴があり、とくに治療をしなくても、年齢とともに自然に治ることがあります。けれども、中には時間が経っても全く改善しない人もいて、自然治癒する、とは一概に言えません。
また、市販薬の中には、顔のいぼへの効果を謳ったものがありますが、実は、顔にできるいぼは、青年性扁平疣贅だけではありません。たとえば、「老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)」もその一つです。これは紫外線や加齢による影響で、角質が厚く盛り上がるもので、青年性扁平疣贅とは全く別物です。市販薬の中には、この老人性疣贅の治療を目的としているものがありますが、こうした薬を使っても、青年性扁平疣贅の改善は期待できません。また、お伝えしたように、青年性扁平疣贅はシミと間違われやすいことから、シミに有効な化粧品や市販薬を試すなど、誤った対処法をしている人も少なくありません。
ですから、いぼなど、皮膚に気になる症状がある場合は、まずは皮膚科を受診して診断を受けることが大切です。その上で、対処法や治療法について相談するようにしましょう。

まとめ

  • 「疣贅」とはいぼのこと
  • いぼは良性だが、中にはウィルス感染が原因のものがあって、知らずにいじると、拡がったり、数が増えてしまうことがある
  • ウィルス感染が原因のいぼには、青年性扁平疣贅や尋常性疣贅がある
  • 青年性扁平疣贅はヒトパピローマウイルスの3型、10型、28型、29型による感染が原因
  • 青年性扁平疣贅の特徴は、表面が平べったい、小さな突起がたくさんできることで、線状に発生することもある
  • 腕や顔にできやすく、とくにおでこはよく見られる部位
  • その見た目からシミと勘違いされることが多い
  • いぼの治療法には、液体窒素を用いた冷凍凝固療法があるが、色素沈着を起こす可能性などがあることから、ほかの治療法がすすめられることがある
  • 薬物療法では、皮膚の免疫力向上やターンオーバーの正常化が期待できる漢方薬「ヨクイニン」がよく用いられる
  • 炭酸ガスレーザーは、皮膚内部の水分に反応して熱エネルギーに変わるという特徴があり、ピンポイントでいぼの治療を行うことができる
  • 青年性扁平疣贅は自然治癒することもあるが、人による
  • 市販薬の中には、顔いぼへの効果を期待できるものもあるが、青年性扁平疣贅ではなく、老人性疣贅の治療薬もあるため、確実に治療するためには皮膚科受診をしたほうがよい