もしかしてストレスの影響?大人の蕁麻疹の原因を調べるには

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

一時的に皮膚の一部が赤く盛り上がり、かゆくなる蕁麻疹。多くの人が一度は経験しているでしょう。蕁麻疹はさまざまな原因が考えられ、ストレスが関係している場合もあります。それでは、その原因を突き止めることはできるのでしょうか。今回は、蕁麻疹の症状や原因、検査方法などについてご説明します。

蕁麻疹の症状

蕁麻疹は、皮膚の一部分が赤く盛り上がる(膨疹)皮膚の病気です。多くの場合、かゆみをともないますが、これらの症状は一過性のものです。なかには一日中続くようなケースも見られますが、ほとんどは数十分から数時間で消えてしまいます。そのため、蕁麻疹が出て皮膚科を受診しても、診察を受ける頃には皮膚の症状が消えていることも少なくありません。
蕁麻疹は、特定の負荷や刺激が加わることによって発症する場合があり、このタイプを「刺激誘導発型蕁麻疹」と呼びます。詳しい原因についてご説明します。

刺激誘導発型蕁麻疹の原因

たとえば、次のような負荷や刺激が加わることで蕁麻疹が現れます。

〇特定の食べ物、薬品、植物、ゴムなど

特定の食べ物や薬品、植物、ゴムなどに対する抗体(身体から異物が入ってきたときに攻撃をする体内の物質)を持っていると、それらを食べたり、触ったりすることでアレルギー反応が起こり、蕁麻疹が出ることがあります(アレルギー性蕁麻疹)。原因物質は検査で分かりますが、なかには特定できないケースも見られます。たとえば、たけのこや青魚といった一部の食品が関係しているケース。このような食品はアレルギー性蕁麻疹を引き起こす可能性も考えられるのですが、それとは異なるメカニズムで蕁麻疹が出る場合があります。アレルギーの検査をしても原因物質は判明せず、同じ食品でも食べかたなどによって蕁麻疹が出ないこともある、といった状況です。こうした蕁麻疹は、専門的には「非アレルギー性蕁麻疹」と呼ばれています。
なお、非アレルギー性蕁麻疹のうち、とくにアスピリン(解熱作用のある薬)が原因のものは「アスピリン蕁麻疹」と呼ばれています。アスピリンは単独で蕁麻疹を引き起こすこともありますが、他の蕁麻疹を悪化させる要因にもなります。

〇食べもの+運動(食物依存性運動誘発アナフィラキシー)

「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」は、特定の食品(小麦、エビなど)を摂った後に運動することで、蕁麻疹などの症状が出る病態をいいます。特定の食品の摂取だけで発症するアレルギー性蕁麻疹とは違い、食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、運動という条件も重なることで症状が現れます。たとえば、昼食後の昼休み中に運動をした、昼食直後の授業が体育だった、というような場面は、食物依存性運動誘発アナフィラキシーが起こりやすい状況の一つです。患者は10代の男子に多いとされ、蕁麻疹以外にもむくみやせき込み、呼吸困難、血圧の低下などの症状が現れます。状態によっては救急車を呼ぶという対応も必要になります。

〇物理的な刺激

物理的な刺激にもいろいろな種類がありますが、とくに機械的擦過(ひっかくなどの刺激)、圧迫、温熱、寒冷、日光、水などによる刺激が原因の病態を「物理性蕁麻疹」といいます。

〇汗

運動や入浴、緊張した時などに汗をかきますが、その汗(あるいは発汗を促すもの)が刺激となって蕁麻疹の症状がでることがあります。これを「コリン性蕁麻疹」といいます。

蕁麻疹の原因を調べる方法

原因を明らかにするためには、いつ、どのようなときに、どんな症状が現れるかを、医師に把握してもらうことが重要です。ですから、まずは医師による問診で症状を確認し、皮膚に症状が現れていれば状態をチェックします。その結果、特定の物質が刺激となっている可能性が考えられるときには、血液検査やプリックテストなどを行います。血液検査では被疑抗原に対するIgE抗体を調べます。プリックテストは、特定の物質が皮膚症状を起こすかどうかを確認するための検査法の一つです。皮膚に特定の物質を少量垂らし、その部分を専用の針(プリック針)で刺して皮膚内に入れこみ、15分後に反応をチェックします。
ただし、日本皮膚科学会は、こうした検査を「一律に行うべきではない」としており、むやみやたらな検査よりも、丁寧な問診と身体の所見の確認が重要、と考えています。ですから、患者である私たちも、いつ、どのような状況でどんな症状が出たのかを、きちんと医師に伝えることが大切なのです。とくに、蕁麻疹はすぐに消えてしまうことも多いので、たとえば、症状が出たときにカメラなどで撮影しておき、診察時に医師に見せる、といった工夫が、正確な診断の一助になる場合もあります。

はっきりとした原因がわからないことも

一方で、診察や検査を行っても、はっきりとした原因を特定できないこともあります。そのような原因不明の蕁麻疹のうち、毎日のように症状の出現と消失を繰り返すタイプは「特発性の蕁麻疹」と呼ばれ、症状が持続する期間によって急性と慢性に分けられます。どちらも細菌やウイルスなどへの感染、疲れやストレス、食べ物、自己抗体(何らかの理由で自分の抗体が自分を攻撃し、症状が出現する)などが悪化要因になるといわれています。それぞれの特徴を見ていきましょう。

〇急性蕁麻疹

6週間以内に症状が治まるタイプです。たとえば、風邪を引いた子どもが蕁麻疹を発症することがありますが、ほとんどの場合、感染症などが治れば蕁麻疹も改善します。このような蕁麻疹は急性蕁麻疹と考えられます。

〇慢性蕁麻疹

症状が6週間以上続くタイプです。なかには数年にわたって症状に悩まされる人もいます。慢性蕁麻疹では、夕方から夜にかけて症状が悪化する人が多いといわれています。

ストレスは大人の蕁麻疹の原因になるの?

お伝えしたように、蕁麻疹にはいくつもの原因が考えられ、原因が特定できることもあれば、そうでないこともあります。また、原因は一つとは限らず、いくつもの要因が絡み合って発症している可能性も考えられます。ストレスもその要因の一つです。ストレスだけが直接的な原因になるとは考えにくいのですが、発症を誘発したり、悪化の要因になったりすることは十分にあり得ます。たとえば、ふだんは問題なく食べている食品でも、ストレスや疲労が蓄積したときに食べると蕁麻疹が出る、などのケースです。 ですから、これまでストレスが溜まっているときや疲れているときに蕁麻疹が出た経験のある人は、生活習慣の見直しやストレスを発散する習慣を身につける、といった心がけも予防法の一つになります。

繰り返す蕁麻疹は皮膚科に相談を

たいていの蕁麻疹は数時間以内に消えてしまうため、放っておくという人も多いかもしれません。しかし、頻繁に起こる蕁麻疹には、特定の物質が関係している可能性も考えられますので、皮膚科の受診をおすすめします。原因が特定できれば、症状が出ないようにコントロールすることも可能です。また、受診の際は、症状が現れたときの対処法について医師に確認しておくとより安心です。

まとめ

  • 蕁麻疹は一時的に皮膚の一部が赤く盛り上がる皮膚の病気で、かゆみをともなうことが多い
  • 蕁麻疹は数時間で消えることが多い
  • 蕁麻疹には何らかの刺激が原因となる「刺激誘導発型」というタイプがあり、食べ物や薬品、植物、ゴム、特定の食品摂取後の運動、物理的な刺激、汗などが原因となる
  • 蕁麻疹は、問診や身体所見の確認、血液検査、プリックテスト、負荷誘発検査などで原因が判明する場合がある
  • 一方で、診察や検査を受けても原因を特定できないケースもある
  • 原因不明の蕁麻疹のうち、毎日のように症状を繰り返すタイプは「特発性の蕁麻疹」と呼ばれ、症状の持続期間によって急性と慢性に分けられる
  • 急性蕁麻疹は、6週間以内に症状がおさまるタイプで、子どもが風邪を引いたときに、その間だけ症状が出るような例は急性蕁麻疹と考えられる
  • 慢性蕁麻疹は、6週間以上毎日のように繰り返す蕁麻疹で、原因を特定できないことも多い
  • ストレスが直接蕁麻疹発症の原因になるとは考えにくいが、誘発したり、悪化の要因になったりする可能性はある
  • 蕁麻疹を繰り返す人は、皮膚科を受診して相談することをおすすめする