秋冬は湿度の低下に注意!内と外から敏感肌対策を

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

ちょっとした刺激で肌が赤くなったり、ピリピリしたりする敏感肌。湿度が低下して乾燥が強まる秋や冬は、肌も乾燥しやすい季節です。寒いシーズンを乗り切るためにも、身体の内側と外側、両方からケアする敏感肌対策をご紹介します。

そもそも敏感肌とは?

自分は敏感肌だと思い、お手入れの方法に悩む人は少なくありません。化粧品メーカーの意識調査でも、女性のおよそ7割が「自分の肌は敏感だと自覚している」と報告されています。実際、ドラッグストアなどには敏感肌用化粧水が豊富に並んでいます。
さて、巷でよく見聞きする「敏感肌」という言葉ですが、実は医学的な用語ではありません。化粧品業界で使われ始めた表現が一般に広く浸透したケースで、診察の場などでも分かりやすく説明するために用いられ、徐々に定着していったようです。こうした背景から、皮膚科の専門医の間でも、「敏感肌」の捉え方には少しずつ差異があります。大きく捉えると、敏感肌とは少しの刺激でも顔の皮膚がかゆくなる、赤くなる、ピリピリするといった反応が出やすい状態、といえます。それでは、なぜこのような症状が現れるのでしょうか。

敏感肌:原因はバリア機能の低下

健康な皮膚には、ほこりや紫外線、シャンプー、化粧品、細菌など、多種多様な刺激から肌を守る「バリア機能」が備わっています。三層構造になっている皮膚のなかでも、とくにその役割を担っているのは一番外側の「角質層」です。角質層は、厚さが0.02mmのとても薄い層ですが、外からの刺激をブロックする機能を持ち、肌の内側の水分が失われるのを防いでいます。
ところが、皮膚の湿疹や気温の低下、乾燥、肌に負担のかかるスキンケア、寝不足、過労、ストレス、喫煙、栄養不足、加齢など、さまざまな要因によって、角質層のバリア機能は低下してしまいます。バリア機能が弱くなった段階でスキンケアや生活習慣を見直せば、皮膚を健康な状態に戻すことはできます。しかし、改善に取り組まず、依然として肌への刺激が続くと、症状が悪化し、治療を必要とする皮膚の疾患を招きかねませんので、注意が必要です。

「乾燥肌」は敏感肌の前段階

敏感肌になる原因として、とくに注意したいポイントは肌の乾燥です。乾燥肌は敏感肌の前段階とも言われ、乾燥が悪化した結果、敏感肌の状態になる、という人が多く見うけられます。
乾燥は、エアコンを使用する夏も含め、1年を通して気をつける必要があります。とりわけ気温と湿度が低下する秋冬は要注意です。空気が乾燥すると、肌もより乾燥しやすく、皮膚のバリア機能も低下します。そこに外からの刺激が加わることにより、皮膚のかゆみや赤み、ピリピリ感など、炎症を起こしやすくなります。そうすると、肌の水分量はもっと低下します。乾燥が悪化し、ますます刺激に弱くなるなど、肌荒れのスパイラルに陥ってしまうこともあります。
このように、敏感肌はさらなる肌トラブルにつながりやすい状態です。ニキビや湿疹、脂漏性皮膚炎や光線過敏症、アトピー性皮膚炎なども、敏感肌から派生する疾患に含まれると考えられています。肌の乾燥は、さまざまな肌トラブルを招く原因の一つになっているのです。

敏感肌の対策

敏感肌は、多くの肌トラブルや病気との因果関係が指摘されています。ですから、敏感肌と思われる症状に気づいたら、早めの対処が肝心です。
我慢できないほど強いかゆみが出ている、赤みや湿疹が徐々に悪化している、といったケースでは、様子を見るという対処ではなく、速やかに病院を受診しましょう。アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の発症や、皮膚以外の別の病気が隠れている可能性もあります。誤ったセルフケアによって症状を悪化させてしまわないように、まずは正しい診断を受けることが回復への近道です。

一方、症状が軽い段階であれば、外側からの対策としては適切なスキンケア、内側からの対策としてはライフスタイルの見直しによって、健康な皮膚を取り戻すことが可能です。

〇スキンケア

現在使用しているスキンケア用品が本当に自分の肌にあっているのか、確認してみてください。とくに、新しく使い始めた製品については要注意です。心当たりのあるものはいったん使用を止め、低刺激の製品に変えてシンプルなケアを心がけましょう。また、敏感肌の引き金となる乾燥を防ぐためには、十分な保湿も重要です。

〇ライフスタイルの見直し

肌の治癒力を高め、スムーズな再生を促すために、バランスのよい食事と十分な睡眠の確保を心がけ、ライフスタイルを整えましょう。

敏感肌を予防するには

敏感肌の対策として、スキンケアとライフスタイルの見直しを挙げました。このことは、敏感肌を予防する観点からも要(かなめ)となります。

〇スキンケアによる予防法

初めての化粧品を使用する際はサンプルなどを活用し、自分の肌に合うのか必ずチェックをして、新たなトラブルを招かないようにしましょう。説明書をよく読んで、正しく使うことも重要です。さらに、日頃から保湿を徹底しましょう。肌のバリア機能を高め、乾燥を防ぐには、肌の潤いを保つケアが必要不可欠です。
また、スキンケアの際はとにかく丁寧に優しく触れ、枕カバーや顔に触れる衣類は常に清潔に保ち、UV対策は1年を通して徹底するなど、外からの不要な刺激をできる限り減らすように意識してください。

〇ライフスタイルの見直しによる予防法

敏感肌を予防するためには、身体の内側のケアも重要です。
1日3食、バランスのよい食事を心がけ、アルコールやカフェインの摂取はほどほどにしましょう。また、タバコの有害物質は、肌にさまざまな悪影響を与えますから、禁煙に努めてください。睡眠不足や過剰なストレスも、免疫力低下や肌トラブル悪化の要因となりますので留意しましょう。
そして、意外に思われるかもしれませんが、スマートフォンの使い過ぎにも注意が必要です。24時間スマートフォンが手放せない今、自宅でも常に仕事の連絡を気にしたり、睡眠時間を削ってネットサーフィンやゲームに熱中したり、という人は少なくありません。こうしたライフスタイルが、知らず知らずのうちに精神的なストレスを蓄積させ、睡眠時間を不足させているかもしれないのです。多くの人が敏感肌に悩まされる要因の一つには、現代社会特有の要素も関わっていると言えそうです。
ですから、敏感肌の予防には、十分な睡眠時間の確保とストレスを溜めない生活がとても大切です。とくに、湿度が低下して寒くなる秋冬のシーズンは、防寒具や加湿器などを適切に使い、冷えと乾燥から身体を守る工夫をしましょう。

敏感肌やそれに伴う肌トラブルはできる限り避けたいものですが、もし症状に気づいたときは、それは身体が発するSOSのサイン、と読み取ることもできます。寒さや乾燥が強まり、身体に不調が出やすくなる季節。今一度、身体の声に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • 「敏感肌」という言葉は医学用語ではなく、捉え方は医師によっても異なる
  • 一般的に、少しの刺激で皮膚が赤くなったり、ピリピリしたりする状態を敏感肌と呼ぶ
  • 敏感肌の症状は、角質層のバリア機能が低下することによって起こる
  • 皮膚の湿疹や気温の低下、乾燥、スキンケア等の要因がバリア機能を低下させる
  • 乾燥肌は敏感肌の前段階であり、肌トラブル悪化のきっかけになりやすい
  • 敏感肌の症状が強い場合は、早めに病院を受診する
  • 敏感肌の対策と予防には、スキンケアとライフスタイルの見直しが重要である
  • 肌への刺激をできる限り減らし、スキンケアは保湿を徹底する
  • バランスのよい食事や睡眠時間の確保、ストレスの軽減も欠かせない
  • 敏感肌の症状は身体のSOSサインと心得て適切に対処する